はじめに
良かった曲まとめも今回で4回目。この企画を始めて、改めて自分の好みの傾向が分かった気がする。そして、サブスクで聴くからこそ出会えた音楽もあってなかなか楽しい。せっかくいいものに出会えたからにはしっかり紹介したい故に、執筆には苦労しているが(笑)
今月も10曲選んでみた。4月は絞り込んだ10曲だった。今までの月より好みの曲が多かった。そして例によってこの記事ではまず5曲紹介!
①Ghost!?/キタニタツヤ
今年に入って毎月のように配信で作品を発表し続けているキタニタツヤさん。作品ごとに作風が違い、面白いなと気になっていた。現に2月に発表した「逃走劇」も良かった。
そんなキタニさんの新曲は先の「逃走劇」のストレートなバンドサウンドとはまた違い、スウィングやらビッグバンドなどのジャズ要素が強めになっている。
イントロで一斉にホーン隊とドラムがおっ始める感じがたまらない。こういったイントロは無性にテンションが上がる。
これはコラボ相手のALIのプロデュース・演奏によるものが大きい。もともとジャズなども得意にしているバンドのため、良い化学反応が起こっている。
展開も目まぐるしくて聴いていて楽しい。
静かに終わるラストも最初の疾走感から考えたら、予想だにしなかった。
歌詞も他ではあまり見かけない言葉のオンパレードで面白い。聴く際には辞書が欲しいほど(笑)
「サイコシス(精神病)」
「ハルシネーション(幻覚)」
「プネウマ(呼吸、息、空気)」
「ユーリカ(発見)」
言葉も難しいが中身もなかなか難解で深い。
タイトルにある「Ghost」は普通に訳すと実態が見えないお化けのような微かであるものであるが、この曲の中では
「現実から来たお化けに引き戻されてしまう」
とあり、先の説明と矛盾する。目の前にある現実から「お化け」が来たとなっている。
現実に引き戻されるというやつだ。
だが、よくよく考えてみたら現実は恐ろしい。曲中でも「緩やかに死ぬために息をしている」と歌っているが、生きてても辛い事もあるっちゃある。それに目を向けて生きるのも怖い事だ。
目に見えるものも、見えないものもどちらも「Ghost」なのかもしれない。
などと哲学めいた事まで考えてしまう。歌詞も深くて考えると楽しい。
3分ちょっとと短い曲だが、展開の多さと歌詞の深さのおかげで時間でははかれない満足感が得られた。
②本当は夜の端まで、(feat.おおお、くじら)/MAISONdes
六畳半ポップスと銘打って、アパートの住人を歌に見立てたり、曲に部屋番号を当てたりして、様々なアーティストやクリエイターがコラボする楽曲を次々と発表しているMAISONdes(メゾンデ)。
今回はクリエイターのくじらさんと謎の歌い手おおおさんとのコラボ楽曲。
くじらさんが作詞作曲を担当。
おしゃれなコード進行で終始進んでいくが、そんなおしゃれな曲調に、夜に陥りがちな鬱屈とした気持ちを歌詞にするのが、いい意味でアンバランス。
「夜の帳(とばり)」という言葉がある。帳とは物を仕切る際に使う垂れた布の事。「夜の闇は日中の明るさを隠すための布」という事でよく例えられる。
この曲もその例え。夜の端まで行って、その布を本当は破り捨てたいと最後には歌っている。
最初は「?」だったタイトルも見事に意味を最後に解説してくれる。「なるほど」と思わず唸ってしまう。
また、謎の歌い手のおおおさんの歌声もこの曲の武器だ。
歌い手といえば男性でも高いキーを求められる(ボカロ曲を歌う事が多いため)イメージだったが、この曲においては本当に真逆。全体的にキーが低い。
サビは少し高くなるが、それでも他の歌い手の曲よりはだいぶ低い。夜をモチーフにした作品にはもってこいの歌声だった。
おおおさんを抜擢したのもくじらさんという事で、作詞作曲を含め彼の手腕もかなり活かされている。
歌詞、曲、歌声…すべてに抜かりない曲だ。おそろしい。
③ストロボメモリー/内田真礼
声優の内田真礼さんの新曲。内田さんの歌声が素敵なのは言わずもがな、楽曲としての構成がとても好きだった。
歯切れの良いピアノとそれに寄せたような歌いだし。そこからバンドサウンドが付いてくる。メロ→サビ前→サビと音階も上がっていって、盛り上がりが分かりやすい。
しかし、まぁここまではありがちな展開だ。
個人的に注目したいのはCメロ。歌詞でいうと「南南西に強い光」の辺りか。3つ目サビの後にあるという珍しい位置にある。3つ目(ラスサビ)の前に置くのが結構定石だと思うのだが。
このCメロがサビの後を受けて、本当のラスサビの役割を果たしている。もはやCメロでもないのかもしれない。
手っ取り早くいってしまえば「南南西に強い光」からのメロディがとても好きだったという事。
今まで出てこなかったメロディになると「ん?」と少し戸惑う事があるが、この曲のCメロは違和感なく腑に落ちるように聴けた。
Cメロに新たな価値観を植え付けられた1曲だった。サビが好きって曲はあっても、Cメロが好きな曲ってなかなか無いので。
④magical mode/花澤香菜
声優さんの曲を複数選んでいたこともあって、続けざまに紹介したい。
花澤香菜さんはつい最近サブスクを解禁したばかり。声優さんならではの特徴的なかわいらしい歌声を改めて聞き直しているところ。
そんな花澤さんの新曲は、そんな歌声と節回しを存分に活かしたものになっていた。
花澤さんの代表曲「恋愛サーキュレーション」を手掛けた神前暁さんが、再び作曲とプロデュースを担当。語りかけるような歌い方がどことなく似ている。
歌い方と韻の踏み方が花澤さんの歌声も相まって、絶妙にクセになる心地よさ。癒しですらある。
普段はロックのようなうるさい(語弊があるな)曲を好き好んで聴くのだが、そればかり聴いても正直疲れる時もある。
そんな時に、何も考えずに力まずに聴ける音楽というのも必要だと感じる。
この曲はまさにそういった時にはピッタリ。疲れた頭や体をからっぽにするのにうってつけな1曲を見つけた。
⑤彼女をまってた/SIX LOUNGE
アルバム『3』がリリースされたSIX LOUNGE。アルバムそのものが非常に良かったのだが、中でもラストを飾るこの曲がとても素敵だった。ロックバンドが歌うバラードの良さが見えた気がした。
サビのメロディだけでもう既に感動的。ハミングだけでも泣けそうなメロディですらある。
そんなメロディなのだから、分かりやすい歌詞を乗せたって良さそうなもんだが、あえてなのか、婉曲な表現の歌詞になっている。
ただ、「愛してる」や「そばにいる」や「君を守る」のような歌詞も分かりやすくていいのだが、遠回しなラブソングもいい。歌詞の言い回しがいちいち琴線に触れてくる!
なかなか今日日、「ひねもすのたり」なんて歌詞に入れてくるバンドを私は知らない。
そういった古き良き日本語を大切にする歌詞も良かったし、ラブソングだが、幸せだけじゃなく哀愁も感じられる。そんな温度の歌詞が個人的な好みのツボを刺激してくれた。
「夜のとばりで 彼女とふたり」
「もしもこのまま 目がさめなくても」
「夜のとばりで、僕らはふたり このままずっと」
これは2サビの歌詞なのだが、
・僕と彼女が二人でずっと居られれば、目が覚めなくてもいい。
・夜のとばり(=闇)にいるとしても彼女と二人だったらそれで十分だ。
そんな意味に聞こえる。好きな一節である。
「目が覚めない」、「夜のとばり」というネガティブなワードがあるからこそ、「ふたり」という言葉がよりポジティブな意味を強めてくれる。
つらくてかなしい事があるから、幸せにありがたみを感じられるのだ。そういった落差をつけるラブソングの方が個人的にはしっくりくる。
それをこんな感動的なメロディに乗せられたらねぇ。
先行配信ではないし、アルバムが出た後にMVが出たので、まぁ仕方ない部分もあるが、もっと聴かれてバレてもいいのになぁと思う。だからただただ聴いて欲しい!
最後に
というわけで前半5曲の紹介だった。声優さんの楽曲を2曲選んでみたが、アニメに疎い私がこういった曲に出会えるのも間違いなくサブスクのおかげ。
声優さんの作品はクリエイターもしっかり付いているうえに、声の仕事をされている人間が歌うのだから、それは良いものになるのはある種の必然めいたものなのかもしれない。
声優さんの楽曲もいいもんだなと。結局は聴く機会次第なのだろう。これからもっと聴いてみたいと思った4月だった。
さて、次の後半5曲もお楽しみに!