最初に
2021年も6月になり、いよいよ半分となった。新曲を聴いていると、ちらほらと夏の歌も出てくる時期になってきた。
そんな6月だが、中堅、ベテランバンドの頑張りが目立った月だと個人的には思った。選んだ曲にそういった偏りが出た(笑)
ということで、早速前半5曲を見ていこうと思う!
①極夜/cinema staff
この曲はかなりかっこよくて一発で好きになった。
タイトルの「極夜」とは日中なのに、太陽が沈んだような状態の事で白夜の反対といったところか。(ちなみに「白夜」という曲も同時に発表している)
疾走感はあるのに詞の世界観は暗いというアンバランスさがたまらなく心地良い。
「ラストダンス 始めよう」
「あまりにも早すぎた別れ歌」
「そっちはどうだい 寒くはないかい」
「心配しないで もうすぐ行くから」
歌詞がひたすらに絶望的で、ずっと暗い状態の「極夜」というタイトルがしっくりき
過ぎ。
そして「死」を連想させる歌詞がまた絶望を煽る。その絶望の中にある儚さがまた美しいとすら思える。
音もひたすらマイナーで、切なさを助長させる。
正直、分かりやすいポップさはないし、売れるような曲調ではないが、ここまで暗い曲があってもいいじゃないかと思わせる曲である。
②いない/tricot
tricotの武器ともいえる変拍子はこの曲でも相変わらず最高にキマっているが、それだけでは終わらず、tricotの進歩も感じられる曲。特にボーカルの中嶋さんの歌声に驚きを隠せない。
最近ではジェニーハイのボーカルとしても活動しているが、それがtricotにも還元されているのだろうか。
以前のtricotはここまで自在にいろんな歌声を出していなかった気がする。
歌声の引き出しが増えてません?ファルセットここまで使ってなかったと思うんですけど?
様々な歌声が聴けるのは飽きないし、単純に楽しい!聴ける作品の幅も広がるだろうし。
ボーカルに驚かされつつ、バンドの音はゴリゴリでつくづくかっこいい。この曲のリフはシンプルながらかっこよくて好き。
そしてゴリゴリなのに、サビはポップで聴きやすくなるのもいい。耳に残る!「いない」で韻を踏むような語感の気持ち良さもサビの聴きやすさの一端を担っている。
ポップさとかっこよさが絶妙なバランスでミックスされていて、この手の音楽にありがちなマニアックに振り切り過ぎるという欠点もない。
この曲ならもっとテレビなどメディアで歌ってくれてもいいのになと思う。歌うの難しそうだけど。
③ミライ/L’Arc~en~Ciel
L’Arc~en~Ciel約4年半ぶりのシングル。ここまで分かりやすく明るいラルクは久しぶり。
コロナ禍における中、またみんなで歌える曲をという事で、ボーカルのhydeが作曲している。
イントロからファンタジーで、終始希望に満ちた世界観である。歌詞ひとつとってもネガティブな言葉はあまり見当たらず、明るく聞こえるものを選んでいるのが分かる。
メロディも覚えやすく、気軽に歌えるのを意識しているのかなと思う。(ラストのサビは無謀だが)
ここ、最近キー的にもメロディ的にも歌いづらそうな曲が多かったので、ここまで易しいメロディを、しかも歌いづらさに定評のあるラルクが出してくるなんて、かえって新鮮だった。
久しぶりの新曲としてはやはり明るい曲の方が都合がいい。そういった意味でこの上ない1曲になった。
④足跡/the peggies
アニメ「僕のヒーローアカデミア」の第5期エンディング。人気アニメのタイアップという事でもう各方面に知れ渡り始めているthe peggies。
そうはいっても、タイアップがいいからといって、易々と売れるわけではない。
しかもアニメやドラマといった作品ありきの楽曲は世界観に合わないと、結構ドライに淘汰されてしまうものだ。アニメやドラマのタイアップはバズるとデカいが、プレッシャーが大きく、大変な仕事だよなぁと個人的に思う。ヒロアカのような長く人気の作品ならなおのこと。
そういった中でも、原作のファンからも支持される曲だと思うし、何より曲そのものが滾る感じがするのが良い!
ど頭からサビでガツンとくるのは常套手段だが、かなり効く。
最初にサビを持ってくる分、普通の曲よりサビの回数が増えるので、サビの印象がより強くなる。ただ、余程キャッチーなサビでないと成立しない手段ともいえる。
その点、この曲のサビはとてもキャッチーで覚えやすい。初見で聴いてもすぐサビは口ずさめそうなくらいだ。ヒロアカは小学生くらいの子ども達も観ていると聞く。(ソースは私の甥っ子、姪っ子)おそらく子供達も歌っているんだろうな。
やはり今も昔も歌える曲っていうのは波及しやすいから強い。
peggiesはこの曲でもっと飛躍するんだろう。
ちなみに2曲目に収録されている「Unleash」もいい。「足跡」とはまた毛色が違う作風でまたオススメ!
⑤カナリア鳴いた頃に/WANDS
名探偵コナンのオープニングだった「真っ赤なLip」が話題になっていた新生WANDS。
凝っていたサウンドだった「真っ赤なLip」と比べて、今回は割とストレートな楽曲。展開もベタではあるが、それがかえって安心感を与える。そしてこういう優しいメロディ、個人的に弱い。グッときてしまう。
そして、切なげな楽曲だというのを一発で案内してくれるようなボーカルの上原さんの歌声も素敵だ。これもイケイケノリノリだった前作と比べて振り幅を感じるほど。
この表現力の振り幅がすごいと感じて、上原さんの素性を調べたら納得だった。この程度の振り幅なんてものは振り幅にもカウントされないほどなのかもしれない。
作詞もボーカルの上原さんがされているということで、優しいメロディによく合う柔らかい言葉選びもポイントが高い。
今回の作品のインタビューも気になって読んでみたが、歌詞は曲ありきで導かれて出てきた言葉だったようだ。
https://www.barks.jp/news/?id=1000202860
インタビュー中にある、歌詞を書くのは本当は苦手だという上原さんの
「好きとか嫌いとかじゃなく、書きたくなくても、面倒くさくても、いい曲をいい曲として世に出すためにはいい歌詞を書かなければならない」
という覚悟ある言葉が印象的。当然の事と言ってしまえばそれまでだが、それを当然の事のように言える所に職人気質を感じる。
新生WANDSのそれぞれのプロの仕事を改めて垣間見た気がした楽曲。
流行りの曲調ではないかもしれない。しかし、いつの時代に聴いてもダサく感じない、色褪せない曲だと思う。
これから先も時代性を抜きにして聴き続けられる1曲だろう。
最後に
という事で前半5曲の紹介だった。先に言った中堅・ベテランバンドの曲というのがどれか分かると思う。ラルク、WANDSは歴としてはベテランといえるし、(WANDSは代替わりしてるが)個人的にはtricotももはや中堅クラスといえるくらいの風格を感じるんだよな。そこにいて音を鳴らしているのが当たり前のようになってきたというか。
ある程度年数を経ると、作風などに変化も出るがそれも含めてバンドやアーティストの歴史になる。
活動歴のあるバンドやアーティストで好きな曲を見つけて、その歴史を紐解くのもまた面白いなと気づいた。WANDSとか久しぶりに昔の曲聴いたらいいもんな。
また違った音楽の楽しみ方を再確認した6月前半の曲たちだった。
またpart.2もお楽しみに。