はじめに
今年も7月となり、下半期のスタート。上半期のまとめはあえて今回はせず、年間にとっておくとして、7月の良かった曲を今までのように紹介したい。
梅雨も明け、ぐっと暑くなってきたのに伴い、テンション高めの楽曲も心なしか増えてきた印象。
そんな中で今回も選んでみた。多分今までで1番悩んだ月になったと思う。それではスタート!
①後付/小林私
新作EP『後付』をリリースした小林私さん。表題曲である「後付」は間髪入れずにいきなりサビから小林さんの叩きつけるような歌声が印象的。
というか小林さんの声が個人的に好きすぎて、それがイントロもなしでいきなり歌われちゃったらもうそりゃ合格だ。改めてインパクト抜群の歌声だと感じる。
小林さんは弾き語りが出自ともいえる方なので、今までの曲はアコギやエレキなどギターの音色が強く出るアレンジが特徴的だった。
しかし、今回の「後付」はホーン隊の音が聞こえてくるなど、より豪華になっている。
そもそものメロディがいいので、どんなアレンジでもなんでもござれである。
現にNHKの「シブヤノオト」でこの曲が披露された際は、アコギでの弾き語りだった。シンプルながらも改めて聞き入ってしまった。
歌声とメロディと伴奏のみという、歌を構成するうえで極限まで情報量を削ぎ落としたのが弾き語りである。
それ故、弾き語りで聴ける曲というのはメロディがいい曲だと私は考えている。
ホーン隊が主張してくる今回のアレンジももともとのメロディが素晴らしいから成せる業で、生半可でやると、アレンジにメロディが負ける事も多い。ラッパ系統の音は聞こえやすいから余計に難しいと思う。
アレンジに新しい小林私を見たが、それでも根底のメロディの良さはじっくりと楽しめる、二度美味しい作品だと思う。カップリングに入ってる「サラダとタコメーター」もかっこよくて好き。
②泡沫/9mm Parabellum Bullet
9mmといえば「Black Market Blues」や「ハートに火をつけて」など激しいナンバーをイメージする人も多いと思う。現に彼らの代表曲にもなっているし。
しかし、今回の9mmは「浸れる」9mmになっている。
バラードといえばバラードなのだが、王道のバラードほど静かではないし、テンポも複雑で、ギターも歪んでいる。
ソロではタッピングなんかもバリバリ入っている。いつもながら9mmのバラードは一筋縄ではいかない。
静の中に一見すると相反するような、歪んだ音が加わる事で聞き応えが出てくる。綺麗なバラードというので終わらせないのが9mm流だなと改めて思う。
歌詞の世界観もいい。自分たちを水の底で発生しては水面に浮かび消える泡に例えている。
最初は
「僕たちは水の底で 生まれてすぐにこわれる泡」
と歌っていたが、
最後は
「僕たちは水の底で こわれてもまだ消えない泡」
と歌っている。
曲調も手伝って、終始暗い曲かと思うのだが、最後に希望が見えるような締めになっているのをぜひ注目してもらいたい。
9mmといえばの曲と比べると、王道の曲ではないかもしれないが、「こんな曲も聴けるのか!」と思ってもらえたらなと。
ただただ激しいだけのバンドじゃないぞというのを知ってもらいたい。(もはやファン目線)
③ポリゴンウェイヴ/Perfume
前回の「Time Warp」から約10ヶ月ぶりの新曲となるPerfume。
ここ最近は歌声のエフェクトが薄めで本来の3人の歌声そのままに近い仕上がりだった。しかし、今回は久々に歌声の加工が強い。
歌声も一つの楽器のように聴こえるエフェクトはPerfumeの代名詞だなと久々に実感する。
ブレイクし始めた2007年以降の曲に近いのもあって懐かしさすら感じる。
当時の楽曲のフレーズ(っぽい)も聞こえてくるのも遊び心があって面白い。「ポリリズム」や「Twinkle Snow Powdery Snow」っぽい音色も。
音もさることながら、機械的な電子音に無機質な世界を舞台にした歌詞を乗せているのも近未来感がマシマシになって良い。
そこに「涙」や「体温」など人間味のある言葉を少し散りばめる感じ…これも以前の彼女達の楽曲を想起させてくれる。「コンピューターシティ」や「シークレットシークレット」辺り。
サウンド面でも言葉の面でも、以前のPerfumeを思い出させてくれる曲。PerfumeがPerfumeたる所以が聴けた気がする。
④三原色/YOASOBI
いまや向かうところ敵なしの感すらあるYOASOBI。今回の曲もまた今までの曲調とは外してきて、YOASOBIの違った引き出しを開けた気分。
サンバ?ラテン?何か南米の香りがするリズムが独特さを醸し出している。
後ろでハンドクラップがリズムをガイドしてくれるので楽しい。車に乗りながら聴いていたら、無意識にハンドルを叩きながらリズムをとっていたほど(笑)
なかなか聴く事のないリズムだった。ポルノグラフィティのアゲハ蝶ぐらいでしかあとは聴いた事がない。
こんな曲を作るAyaseさんも鬼才だが、これを歌う(歌わされる?)ikuraさんも大分すごい。
今までも十分、一般人には到底歌わせる気のない曲ばかりだった気もするが、キーの高さや幅の問題だった。
しかし、今回は基本のリズムが独特なのに加えて、歌うためのリズムも複雑すぎるのだ。
2回目のサビが終わった直後のメロ(「ああ 何だっけ」から始まる部分)からおかしなリズムになり始め、ラップにも似た節回しになって、言葉を詰め込んでいくのだが、そこからまたリズムが変わって緩いメロディに戻る。緩急がえげつない!歌いこなすには余程聞き込まないといけなさそう。
サラッと歌えるようなリズムでないので、ご本人もきっとめちゃくちゃ歌い込んだんだろうなと想像する。
そして、「これでも歌えるだろう」、「歌ってみせる」という互いの信頼関係も見える。二人の相乗効果が楽曲そのものを良いものにしているのだろうな。
YOASOBIの楽曲、今年もドえらいのばかり出してくる。このブログでも良かった曲にもう4曲も紹介している。まだ7月なのに。
⑤花占い/Vaundy
「やっとVaundyにハマれた!」そう思えて嬉しかった。
というのも今までの楽曲も「すげぇ」とは思うものの、良さを理解しきれていなかった。理解したいのだが、私には難しいなと思ってすらいた。
しかし、今回の曲は「超」と付けて差し支えないほど、ポップだし、キャッチーではないだろうか。
「Vaundy、すごすぎて難しい」と感じていた私に歩み寄ってくれたのかと思うほど(勘違いも甚だしいのだが)、分かりやすく楽しい曲だ。
のっけからサビで、後ろでクラップも鳴って…。もう既に気分が上がる。そして、ブラスの音がその気分に拍車をかける。
そもそも、サビのメロディがとても覚えやすいのがいい。歌いたくなるサビっていうのは今も昔も強い曲である。
あと、お気に入りなのがCメロ!ラストのサビに向けて、盛り上がりを最高潮に持っていく役割を100点満点で果たしている。
MVの奇天烈な振り付けもクセになる。このダンスも曲の華やかさを増幅させるのに一役買っていて、天井知らずにどこまでもポップに振り切れさせている。
3分半足らずとは思えない満足度の高さだった。
最後に
という事で前半5曲の紹介だった。
自分が普段好きで聴いているアーティストの作品も多かったが、それだから無条件に選んだというわけではなく、自分がそのアーティストが「好きな理由」がしっかりと表れていたので選んだというところが大きい。
後半の5曲もそんな理由で選んでいるものが多い。
自分たちの武器をしっかり理解している事こそ、それ自体も大きな武器になっているのだというのを改めて感じた。
後半戦も結構普段お気に入りのアーティストが入っている。次の記事で紹介したい!それでは。