最初に
7月の良かった曲紹介の後半戦。選ぶのに苦心したというのは前半戦でも書いたが、最後の10曲目が特に埋まらず苦労した。選考漏れしたが、あとで紹介したいほど。それでは後半5曲のご紹介!
⑥Red Criminal/THE ORAL CIGARETTES
オーラルらしさが全開の楽曲。
何が「オーラルらしい」のか改めて考えてみると、疾走感はマストで、アレンジやギターのリフ含め、何かスリリングというか聴いていてハラハラする展開が彼ららしさなのかなと思う。
例えるならサスペンスものに合いそうな曲というか。余計に分かりにくくなったかもしれないが(笑)
「Black Memory」とか「Catch Me」とかも聴いていてハラハラするし、それがドラマチックな展開を生んでいる。
去年発表したアルバム『SUCK MY WORLD』では様々なジャンルの曲があったり、コラボもあったりと新たな試みが垣間見えた作品だった。
その為、ここでまたオーラル流のストレートなロックナンバーをシングルとして持ってくるとまた新鮮な気持ちで聴けるし、また『SUCK MY WORLD』の曲も活きてくる気がしている。(実際にもう一度振り返って『SUCK MY WORLD』も聴くとまたこれも良い。)
らしい曲という事もあり、ライブでもキラーチューンとして、これからのオーラルにとっても存在感のデカい曲になりそうである。
⑦真昼の月明かり/月詠み
ボカロPとしても活躍中のユリイ・カノンさんが中心となって結成されたバンド月詠み(つくよみ)。
2020年の10月に活動開始という事で、まだ活動1年未満の新進気鋭バンド。とは言いながらも、ユリイさんはじめ、他のメンバーの3人も、
・シンガーソングライター(ボーカル)
・ボカロP(ベース)
・ソングライター、ユリイさんの楽曲のサポートギタリスト(ギター)
と実力派揃い。地力がそもそもあるので、活動歴1年未満はいい意味であてにならないほど。曲を聴いてももう既に完成されている印象だった。そりゃそうか。
それに加え、サポートドラムには元パスピエの矢尾拓也さんが今回は参加しているという事で、面子に隙がなさすぎる(笑)
作詞作曲をされているユリイさんがキーボード担当という事もあって、ピアノが全編印象的。しかし、ギターの音を立てる箇所もしっかり作っている。
ピアノもギターもメロディアスな楽器のため、それぞれの音を表現しようとすると、ぶつかり合ってしまいそうだと素人目には見える。
しかし、それぞれ引く所は引き(バッキング・リズムに徹する)、立てるべく楽器を立てるというような編曲に聞こえ、絶妙なバランスが成立している。どちらの美味しい音も聴けてお得な感じすらある。
あとはボーカルのmikotoさんの歌声が好み。凛とした声が魅力的。
歌詞も文学的で、なかなか考察が捗りそうでいい。
ただただ小難しい言葉を並べて、結果的に意味が酌めないなんて歌詞もあるが、意味が分かるか分からないかちょうどいい歌詞だと思う。適度に考える隙を与えるくらいのいい塩梅。
この曲が良かったもので、他の曲も振り返って聴きたくなった。アルバムも9月に出るらしいので、これから注目していきたい。
⑧猫騙し人攫い/ビレッジマンズストア
アルバム『愛とヘイト』を7月14日に発売したビレッジマンズストア。
アルバムのリードトラックともいえるこの「猫騙し人攫い」は彼ららしいテンションの高いギターロックになっている。そして、跳ねるようなドラムのリズムパターンも印象的である。
アルバムそのものが良かったのは言うまでもないのだが、収録曲の中でも一際目立っていた曲だった。
私はMVを観る前にアルバムを聴いていた。そして、この曲が1番好みだったのでMVがあるのを見つけた瞬間、是非とも紹介したくなった。
「彼ららしい」と先にこの曲を評したが、そう感じるのには他にも理由がまだある。それを思ったのは言葉選びだ。
もともと日本語を大事にするバンドだと私は感じており、普段使いしないような言葉を多く使っている。詞なので書き言葉になるが、それにしても特化している。
今回も今回で、まずタイトルが「猫騙し人攫い」だもの。更には「八方暗がり」だとか「掌底」だとか、まず普段使わないような言葉ばかり。こういった表現にも彼らの色が出ている。
意味をくみ取るのはなかなか難しいが、聴いている時の語感が気持ちいいので、それを期待して聴いているところがある。(書いてて先の月詠みと矛盾してしまったが、何を期待して聴くのかにもよって歌詞のあり方も変わるのかなと思った)
テンション高くがなるような歌声、うるさいほどのギター、語感のいい普段使いしにくい言葉…。ビレッジマンズストア色が綺麗に出ている曲。
この曲がいいと思ったら、是非収録されているアルバム『愛とヘイト』を聴いてもらいたい。分かりやすくその色を感じられると思う。
⑨Be The One/HEY-SMITH
8/2にシングル『Back To Basics』を発売したHEY-SMITH。その中に収録される「Be The One」が先行配信、MVも発売に先んじて公開された。
低音のリフでシリアスに始まるイントロから既にHEY-SMITHのソレだと分かりテンションが上がる。
そして、楽曲構成でも
「ここでダイブさせたいんだろうな」
「ここはステップ踏みたいな」
「ヘドバンもしたいな」
今のライブハウスでは、やりたくてもできない光景が思い浮かぶような仕掛けが随所に盛り込まれている。
聴いていてうずうずするのは分かってくれる人もいると思う。
こういった曲調の中で歌われているのは、
「従うことに今は意味はない」
「俺達で元に戻そう」
「1度でも平等だっただろうか」
といったような言葉たち。
明らかに今の情勢を考えて作られたのが分かる。そして音楽やライブハウスシーンに対する対応や世間の声へのフラストレーションが読み取れる。
しかし、その一方で「今は自分ではない」「正しくするべき」などと歌っている箇所もある。
今、世界を救うのは自分たちアーティストの番ではなく、今できることは正しくする(ルールを守る)事だという事も一方で理解している一節に聞こえる。
今は来るべき時ではないが、ひとつになって(タイトルの「Be The One」の訳)、この局面をルールに則って乗り越えていこうという意味に受け取れた。
本当にこのMVのように騒げるような未来が訪れる時が来てほしいと感じるし、そんな未来が叶えられる時にこそ、この曲の本当の価値が分かると思う。
⑩夏嵐/ジェニーハイ
迷いに迷った10曲目に決めたのはジェニーハイによる夏ソング。
今やもう違和感なく当たり前のように、バンドとして活動しているジェニーハイだが、もともとは番組の企画のひとつだった。その域をとうに越えているのは、楽曲の良さがまず、いの一番にくる。
プロデューサーも兼ねている川谷絵音さんの作る曲の質の高さは本当にすごい。(そしてリリースペースもとんでもない)
今回の曲は清涼感強めの夏歌。ピアノとギターのカッティングの音が聴いていて実に心地いい。
あとはドラムの軽快さ!たまらない。この曲の肝である、えもいわれぬ爽やかさを底上げしている。ドラムは土台になる楽器だと改めて思い知らされる。
爽やかだし、アウトロもあっさりしているのでサラッと聴けるのだが、聞き流しで終わるのではなく、胸に少しの引っ掛かりを残してくれるのも個人的にオススメしたいポイント。
「過ぎていく夏」をテーマにしているのがそもそも大きいのだろうが、それをあえて感情的に表現する事なく、比較的淡々と歌う中嶋さんのボーカルも効いているのかなと感じた。
tricotの楽曲について書いた時も思ったが、いろんな側面を見せるボーカルだなと思っている。
ジェニーハイにしても、tricotにしても、出す曲出す曲が「次はどんな感じだろう」と楽しみになるのは、多面性のある中嶋さんの歌声によるのも大きいのだろう。
ベースのくっきーさんも普段はあんなに破天荒な感じなのに、ジェニーハイだと縁の下の力持ちになっているのもいい。ドラムのリズムが結構変わるこの楽曲だと、ベースの黒子感がより出ている気がする。
自分の中で毎年、その年の夏を思い出す曲があるのだが、2021年の夏はこの曲がそれになりそうだ。
最後に
という事で後半5曲を紹介した。プレイリストもいつものように作ってみたので良かったらどうぞ。
7月は結果的に夏の歌(ジェニーハイ)も入ったうえ、泣く泣く入れられなかった曲にも夏を感じる楽曲もあり、いよいよ夏になってきたなという印象を受けた。
夏の歌は基本的に好きなので8月もどんどん出てこないかなと思う所存。
そして今回は個人的に好きなアーティストが挙って「らしさ」全開の曲を発表していたので、偏りが出てしまったかもしれない。
それでも、普段聴かないアーティストを聴く機会、きっかけにしてもらえたら嬉しい。
それではまた次の記事で!