音楽

2021年8月良かった曲まとめpart.2

最初に

8月の良かった曲紹介、今回は後半5曲。

後半はバンドが多めになった。5曲中4曲がバンド名義である。そして意図せずゆったりめの曲が大半になった。

それではどうぞ!

⑥花のように/eill

4月の良かった曲に「ここで息をして」を挙げてから、ずっと存在が気になっていたeillさん。今回の「花のように」は彼女の売り(だと思っている)のソウルフルな歌声とそれに呼応するような力強さを感じるピアノが印象に残る楽曲だった。

そして、強さとのギャップなのか、サビの後ろで流れるストリングスの美しさもいいのなんの。

前述の「ここで息をして」では情熱的で、ダンサブル(本人もMVで踊っていたし)なナンバーだったが、よりテンポを落とした楽曲でも彼女の歌の魅力は相変わらず。

そして、その曲に合った歌い方をする事で、聴き手に分かりやすく世界観を伝えてくれる。

おかげでこちらは何の違和感や滞りもなく楽曲の世界観にスッと入っていく事ができた。ありがたい。

よく「表現力」というが、簡単に解釈すると、一辺倒の調子で歌わず、その楽曲に見合う歌い方をする事を指すのかなと思っている。そして、楽曲に聴き手をいかに入り込ませられるか。

主観的な裁量もあるので、曖昧な「表現力」の査定だが、個人的にはeillさんは表現力のあるシンガーだと言いたい!もっと幅広い曲を聴きたくなる歌声。

あと、サビのメロディが今回のは好きだなぁ。何なら最後にもう1つサビが来ても良かったほど気に入っているメロディだ。(「え?もう終わるの?」って正直思った)

サビ前で1度音程が下がるのもまたいい。「はずなのに」で音程が上がっていくメロディだとありきたり過ぎてつまらない!と思ってしまうが、最後の「に」だけ下がるのがいい意味で裏切りがあり、面白みを感じる。

普通に聴いていても、シンプルにいい曲なのだが、細かく聴いても魅力的な部分が詰まっている曲。

⑦Feelin’/TENDOUJI

歌詞も英語だし、意味も分からないのに、なぜか1回聴いただけで、「すげぇ楽しそうな曲」と思わせる今回の「Feelin’」という楽曲。

音源だけでもそう感じたのに、MVでのメンバーのはしゃぎっぷりやポップな字幕もあって、より楽しい気分にさせてくれる。まずは何も考えずに聴くだけ聴いてみるといいだろう。

そして、歌詞と意訳が動画の概要欄に載っているので(毎回親切!)、読んでみると、決して100%明るい歌を歌っているわけではなく、何度も出てくるサビでは、

「僕の純粋な感覚を返して欲しい」
「何で好きに生きさせてくれなかったんだ」
「こんなのは自分じゃない」
「僕は僕を取り戻したいんだ」

(概要欄の意訳より)

と少し、影のある事を歌っている。

そして他の部分も、怒り悔恨にも聞こえる歌詞がある。べらぼうに明るい曲調にネガティブな歌詞が乗っかるのが個人的に好き。

実際に生きていても、

「明るく振る舞っているけど、実際はそれどころじゃない」

みたいな場面ってあると思うが、この曲も似ている気がした。

「取り繕ってみるけど、脆い。」

そんな不完全なところに人間味を感じて、それがこの曲の魅力になっているのかなと思う。

世の憂い風刺(警告とも呼べる)、怒りを効かせた言葉たちがTENDOUJIっぽさでもあるし、飾らない人間臭さを感じてとても好き。

本人達が意訳を付けてくれるので、自分達から発せられた言葉という意識が強いのもあるだろうが。

考えずに楽しめる部分考えさせられる部分を2度美味しくいただける楽曲である。
TENDOUJIも最近出す曲出す曲、個人的に当たりまくっていて注目せざるを得ないバンドになっている。

⑧劇場/Dios

8/18に4作目のデジタルシングルとして発表された「劇場」

音源だけ聴いていいなと思い、メンバー等の素性が気になり、調べてみた。

すると、元ぼくのりりっくぼうよみのたなかさんシンガーソングライターやボカロPとしても活躍するササノマリイさんギタリストとして世界から注目されるichika nitoさんによる、まさにドリームチームともいえる面々だというのを知った。

全員ホームランバッターみたいなバンドだな。

曲の方はというと、綺麗なピアノの音色に聞き惚れている中、5秒足らずでほとんど間髪入れずにボーカルとギターがなだれ込むように入って、メロを展開していく。そこから既に曲の概要と世界観が見えるかのよう。一気に引きずり込んでくる。

そして、たなかさんのヒップホップのような歌い方が妙にクセになる。

トラックのように、後ろで規則的に流れるメロディとリズムもヒップホップっぽさを醸し出している。横ノリ感が心地いい。これはササノさんの手腕か。

聴いていて、規則的だと油断していると2番の途中からギターが歪んで(音源の1分40秒辺り~)今までとは違うリズムのギターが聞こえて今までのパターンを汚してくれるところも好み。ギタリストであるichikaさんの見せ場だ。

歌詞を書いているのはたなかさん。

叶わぬ恋愛舞台で踊る人の2つを比喩として用いている。マイナーなコード進行も相まってかどことなく退廃的な世界を感じる。

「賞味期限つきの愛」
「砕かれることが決まった恋」
「終わったら綺麗に消えよう」

残酷なほどに終わりを意識する言葉が並ぶ。終わる事、果てる事の美しさを感じさせる言葉選びが秀逸だと感じる。

と、このように三者三様の個性を遺憾なく発揮させているのにも関わらず、それらがぶつからずに見事、調和しているのが1番すごい。

どこから切り取っても楽しめる楽曲だと思う。是非隅から隅まで味わっていただきたい!

⑨ミュージック/パスピエ

今年に入って3曲目の発表となるパスピエ。新曲は夜に聴きたくなるようなゆったりとしたテンポの曲。

このゆったりしたテンポに、大胡田さんの柔らかな歌声がマッチしていて、気分を落ち着かせてくれる。

最近、なかなか気が立ってしまう世の中で、一種の安定剤のような役割を果たしてくれそう。単純に助かる。

そしてこの曲から受けたもう1つの印象は、

「あまりバンドっぽい曲ではないな」

である。バンドという形式で演奏しなくても成立しそうだと感じたからだ。

そういった面では、ライブがどうこうというよりは音源として聴いてもらう事に比重を置いた作品にも聞こえてくる。

このような曲もあり、ギターがもっと絡んでくるようなバンドっぽい曲もあり、パスピエは本当に作風に幅があるので正直、時にはしっくりこない曲もある。

しかし、その幅広さ故に「まぁ、またしっくりくる曲がくるだろう」と焦らずに次の曲を待てるのが不思議である。普通だと、1度合わないと感じると離れがちになってしまうものだが。

パスピエの引き出しの多さ、発想の自由さをまざまざと見せつけられたようだ。

この曲に限らずいろんなパスピエを聴いてそれを是非体験してもらいたい!

⑩エンパシー/ASIAN KUNG-FU GENERATION

劇場版『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズミッション』の主題歌になっているこの曲。

歌とアルペジオのみで始まる歌い出しで思わず鳥肌が立った。静かな始まりなのに、インパクトがとてもある。

そこから速めのリズムのドラムが入ってくるのだが、そのスピードと反比例するかのようゆったりと繰り返すアルペジオと、間を楽しむかのような音。2本のギターはスローなのが面白い。ベースも更に後の方(MVの1分30秒くらいから)から入るがそこもベースならではの存在感があって好きな部分。

楽器隊がだんだんと揃って、音もどんどん厚くなっていって、サビへと向かっていくのが、いかにもバンドだからこそ出せる音という感じがしてこれもまたいい。

シンプルながら、サビへ突入する高揚感がたまらなく気持ちいい。

そして、歌詞がいいのはアジカンではもう言わずもがなではあるが、そもそものタイトルの「エンパシー」というのがいい言葉だなぁというのもしみじみ思っていた。

「エンパシー」は相手の気持ちや感情を自分の思考や立場と切り離して、理性的に思いやる事。

似ている言葉で「シンパシー」があるが、相手の気持ちを共感するところまでは「エンパシー」と似ているが、その共感の仕方が自分と重ね合わせて、より感情的という点で違いがあるのだそう。

(参考:https://www.workport.co.jp/plus/articles/5544)

音楽における歌詞では「シンパシー」を目にする事が多い。そっちの方がより周知されている言葉だし、伝わるからだろう。

しかし、比較的耳馴染みのない「エンパシー」という言葉をタイトルにするほど、共感という行為の違いを掘り下げたかったのかなと思う。

この曲では


「きっと憐れみも悲しみも煎じ詰めればエンパシー」

という一節があるが、多分「煎じた」だけならシンパシーなのだろう。

もっとその奥にある

それぞれの立場
環境
境遇

など様々な違いがある事を理解した上で共感する(エンパシー)事が煎じ詰めた状態だと言いたいのだろう。

非常に細かい言い回しなのだが、そういった部分までこだわって歌詞を考えている…。いかにもアジカンらしいなと思う。

「似たような言葉だから「シンパシー」で良くね?」とはならないところがいいんだよな。

アジカンは聴けば聴くほどだんだんと良さを見出だしていく曲が最近は多かったのだが、今回の曲は1度聴いただけで気に入ってしまった。

アジカンの中でもまた新たな代表曲になるんじゃないかと大いに思っている。というか…なれ!(笑)

最後に

という事で、後半5曲を紹介した。選定に時間がかかってしまった。他にも入れたい曲があって困ってしまう。これは毎月の悩みなのだが、自分で最初に決めたルールなので仕方ない。(自分で自分に縛られている)

そして、今回のプレイリスト!

9月はどんな曲があるだろう。今から楽しみで仕方ない。そして、今回選んだ曲も聴いてみて気に入ってくれたら嬉しい!ではまた次の記事で!